米新興が錬金術を発見か 核融合反応使い「水銀から金を生成」と主張

2025年7月23日

【ヒューストン=大平祐嗣】未来のエネルギーとされる核融合発電の開発を手がける米国のスタートアップ、マラソン・フュージョンは22日までに、核融合のプロセスを応用して、水銀から金を生み出す方法についての論文を公表した。論文は専門家による査読を受けていない状態だが、会社は「錬金術をみつけた」と主張し、英フィナンシャル・タイムズ(FT)が報じるなど話題を集めている。

マラソン社は2023年設立でカリフォルニア州に本社を置くスタートアップ。米エネルギー省も核融合関連の技術開発で363万ドル(約5億3千万円)を支援している。

一般の金属などを金といった貴金属に変える錬金術は古くから研究されてきた。マラソン社は論文のなかで、「古典的な錬金術の目標は今、実践的な工学技術によって実現可能なものとなった」と記した。

マラソン社によると、核融合反応で生じる高エネルギーの中性子を使って水銀の原子核から中性子の数を変化させることなどで金が生じる。現在核融合開発で主流となる「トカマク型」での反応過程で生産できる。発電時に副次的に金を製造できれば核融合の損益分岐点を大きく下げられるという。

FTによると、出力100万キロワットの核融合発電で年間5000キログラムの金が生み出せるという。発電事業の収益が倍増する可能性があるとしている。一方、中性子の数が安定していない金を生み出すといった可能性も指摘している。

金取引を担う三菱マテリアルによると、年間の金の採掘量は3000〜4000トンで推移している。

核融合発電は原子核同士が融合する際に発生する膨大なエネルギーを使って発電する。核分裂反応による原子力発電と異なり、燃料を入れ続けなければ反応が止まり暴走が起きにくい。二酸化炭素も排出せず、将来の発電手法として注目されている。

マラソン社の研究内容は専門家などによって検証される必要がある。

ソース:米新興が錬金術を発見か 核融合反応使い「水銀から金を生成」と主張 – 日本経済新聞